男に追い付いた私は、言葉にならない怨嗟を叫んでやりながら、剣を背中に突き刺した。

空中を高速で飛翔してきた剣も一斉に、男へ殺到する。

その腕に、肩に、胴に、足に、私の復讐が。

肉が裂かれる音、血が吹き出す音、鉄が擦れる音が、チャカチャカと。

「ぎぁ、あああっ、あ……!」

唾液と鮮血の混じったものを吐露しながら、男が崩れていく。

膝を突いて、床一面に血を広がらせて、私と壁一体に赤い斑紋を浴びせて、崩れていく。

首と肩をガタガタと震わせながら振り返る目が、血走っていた。

「こ、の……人ご――し……」

ありったけの憎悪を込められた言葉を、拒絶する。

ないしは、この男ごと。

「違います。これは、粛正です」

言葉の裏に秘めた、復讐。行動の末に理解した、自分。

嘘の需要は高い。

だから遠慮なく、嘘をしようする。

「ご冥福を、いのってあげます」

最上級の、嘘を。

男はそして、死んだ。

それは雨の降る、静かな夜だった。





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