腰を折って、彼が血溜まりからなにかを拾い上げる。

男がずっと聞いていた、CDプレーヤー。チャカチャカと、相変わらず軽薄で耳障りな音色を流している。

プレーヤーの蓋を開けた彼が、銀色の円盤を取り出す。音がやんだ。

傾けたり自分の顔を写したりした彼は、やがて溜め息をついた。

「せっかくの珍品をこんな風に使ってしまうのはどうだろうね。実験じゃなくて、彼がやっていたのは練習だったし。よりにもよって死の旋律。西蔵の家にあったものだろうけど……まさか、こんな形で派生するなんてね。ほかのレコードはどうしたんだろう。彼の家かな?」

「どういうことですか?」

彼は頭を掻いた。

「うーん、あのね、この地域に伝わる人外魔境の示し歌って知ってるかな? 北に門あり南に塔あり、西が蔵なら東に城なりっていうの」

「……」

「あ、知らないならいいんだよ、うん。で、これはそれぞれ北門、南塔、西蔵、東城っていう名家のことなんだ。

この西蔵っていう家系がいろいろ珍しい代物を保管してる、言わばコレクターなのさ。だから、これは死の旋律だったけど、ほかのマジックレコードも西蔵家にあるのかなってこと」

それはつまり、私のような死者を出す装置がほかにもあるかもしれない、ということか。