横にいる彼が、整った眉をややしかめて、苦笑する。

「やあやあこれは、だれかと思っていたけど――西蔵のご子息だったのか。こんな時間にこんなところへ……君のお見舞いかな?」

「顔は知っていますが、友人ではありません」

「あ、そう?」

   ミ ズ
冷たく言葉を差すと、彼は肩を上下させた。

「せっかく様子見に来てあげたのに、なんだかずいぶん――頼もしいね? 剣なんて持ってたし」

「理不尽なものが嫌いなんです、私。二度も殺されたくありませんから。それにあれはアナタが、」

「悠長に話してんじゃねぇよ、お前ら」

と、廊下に転がっているドアを蹴りながら、男ががなった。

乱暴な言葉を遣いなれていないのか、無理に私達を威嚇しようとしているのか、イントネーションがどこかずれていて、間抜けな声になっている。いわゆるドス、というものがなかった。