静けさが、凪いでいる心に、問いかけてくる。

自分は、なんのために今、ここで生きているのだろう。

なにかほしいものがある？　そう問われて、本を要求した。

そして望んだまま、本を読んでいる。

だけど、私は本当に本を読むために生きているのだろうか。

いや、自問が大きすぎる。

大きすぎる？

「大きさなんて関係ない。人は答えを持っている、か」

彼の言葉を暗唱して自嘲、さらに、疑問を否定する。

だとすれば、私は自分で生きるための答えをすでに持っているということになるのだから。

死んで、†という言葉を理解してまで構築し直した『私』という存在は、なぜ生きているのか。

その答えは、右手の感触が、きっと教えてくれることだろう。



「――こんばんは」

と、呼び掛けてみた。

どれだけ息を殺しても、私に『嘘』は通用しない。

ドアの向こうに誰かがひそんでいることぐらい、知っていた。

いや、知ることができたというべきか。