不思議なまでに凪いだ心、おかしいまでに静かな世界、来ることすら許されない硬直の時間、奇妙な彼、そして真っ白い景色。

「わたし、どうなってるの」

率直な疑問が、今度はいともあっさりと、声になっていた。さっきまで、臓腑をねじ繰り回すような気持ちでも出なかった声が、あっさりと。

私も驚いたが、彼も驚いていた。私を見下ろす目が、ゼラチン質を強調するように、きらりと光った。

「へぇ、驚いた。もう声が出るようになったんだね? 早い早い。君は素質がありそうだ」

「……質問に、答えてください……」

いまさら、出してみてから気付いたことなのだが。

私の声は、穴の開いたふいごが喋るように掠れていて、さらには、涙で湿っているようだった。どうしてこんなに、私の声は泣いているのだろう。

コツン、コツン、コツン……彼が、立ち位置を移動する。マネキンのように整った、恐ろしいほどの美少年が、また逆さまに覗き込んできた。

にこりと微笑まれる。