目の前には、ガラス玉の如く焦点のわからない瞳をした、少し年上らしい、男子。

黒目黒髪……日本人としか思えない特徴ばかりの顔。にもかかわらず、なぜか外国人のように思えてしまうのは、その男子の顔立ちが人形のように精巧過ぎるからだと気付いた。

男子の顔は、スーッと視界の上へ、フェードアウトした。

アナタはだれ、ここはどこ、私はどうなっているの。今は何時。学校に行かないといけないんだけど。

もろもろの質問を、した。したつもりだった。口は開いて、だが、声は出ていなかった。

「まだ完璧には復調してないみたいだね。まあ、それも仕方ないかな。無理はしないほうがいいよ? 君は一回死んでるんだからね。うん。無理はよくない、無理は。ゆっくり回復を待つしかないね」

私が……今、なんて……?

その質問さえ、できなかった。声が出ないのだから。