医師には、昏睡から目覚めて記憶の錯乱が起きていると思われ、両親はただ、瞳に青い色を浮かべるばかりだった。

余計な心配をかけないほうがいいと思ったから、追及は、やめた。

人は、知覚範囲を超越した出来事を、認識できないのだから。

それから父は私の頭を撫でて仕事へ戻り、母は入院生活で必要なものはないかと、優しい眼差しで問うてくれた。

だから私は、本を持ってきて、とお願いし、そうしてもう丸一日、本を読んでいる。

魔法と剣が活躍する、ファンタジーだ。分厚いハードカバーのこれを、パタンと、閉じる。

ふと見やった窓の外は、私が目覚めて以来ずっと、雨が続いていた。

昼を過ぎているにもかかわらず、分厚く灰色の雲で、外は暗い。

ただでさえ十二月ともなれば日が短くなるのだから、なんだろう、いやに暗澹とした世界だった。

ガラスに当たる水滴が水滴と出逢い、大きくなり、自重に耐えられなくなって、滑り落ちていく。

あまりに静かな、雨水の流行。ぽ、ぽ。と、時おり、窓のサッシから落下する水音が、映えた。