ところが、朝食の席でハイレット様が予想外の提案をしてくれた。

「ロザリア様。こちらを見ていただけますか?」

 そっと差し出されたのはベルベッドの黒い小振りの巾着だ。中になにか入っているようで、丸く膨らんでいる。

 巾着を開いて中のものを取り出してみると、それは探し求めていた魔石イーグルアイだった。

「これは……しかもかなり高品質です。いえ、特級クラスのものね。このイーグルアイはどうされたのですか?」
「実はロザリア様のお力になりたくて、グラシア侯爵に無理を言って譲っていただいたのです。ですからどうぞお受け取りください」

 なんということだろう。あれほど警戒していたのに、ハイレット様はあっさりとふたつ目の素材を手に入れてくれた。

 セラフィーナ様が帝都に帰ったことといい、もしかしたら皇帝の命令で動いているだけなのかもしれない。それでも完全に警戒を解くわけにはいかないけれど。
 どちらにしても、これで残すはひとつとなった。

「ハイレット様、本当にありがとうございます。これであとはレッドベリルのみとなりました」
「ええ、そうですね。最初のお話では獣人の国ファステリアの商会をあたるということでしたね」
「はい、早速ですがこのままファステリアまで行こうと思います。ハイレット様には大変お世話になりました」

 帝国内ならまだしも、さすがに他国まではついてこないだろう。