そこへハイレット様とセラフィーナ様が戻ってきて、金切り声が店内に響いた。

「えっ! アレス殿下!? こ、こんなところで破廉恥ですわ!!」
「……っ! いくらご夫婦とはいえ、このような場で触れ合うのはやり過ぎではないですか?」
「も、申し訳ありません! 私がふらついたので、アレスは支えてくれただけなのです!」

 嘘はついていない。その後ちょっと離れ難かっただけで、間違ってはいない。

「それで、この店に素材はありましたか?」
「いや、それが今はないそうだ。入荷したら取り置きして、すぐに知らせをもらえるよう手配した」

 アレスが何食わぬ顔でさらりと話題を変えて、素材のことで話し合った。
 結局、ハイレット様が案内してくれた店ではどれも在庫がなく、次の店舗を目指すことにした。