マルクスとベアトリーチェ、クララとギュンターという2組のカップルが会場に戻ると、
会場は異様な雰囲気に包まれていた。
会場の中央には怒った顔の両家の父と慌てふためいている母親たち、
開き直ったかのようなテオと不安げなマーサがいる。

「兄さん、早く来て!」
テオが大声でマルクスを呼ぶ。
「これは一体どういうことか説明してもらおうか。」
ラーデマッハー大将の怒りを含んだ声にマルクスは少しも動じない。
「父親主導で持ち上がった今回の縁談ですが、当事者のどちらにも恋人がいたので破棄させていただこうと思いまして。」
「何だと。というか、クララの横にいるのはロートシルト少将じゃないか。2人は付き合ってたのか?」
そんなことは聞いてないぞと言わんばかりにラーデマッハー大将がギュンターに詰め寄る。

「クララが騎士団に在団しているときは付き合っておらず、私が一方的に思いを寄せていました。今回クララが結婚するという話を聞いていても立ってもいられず、クララをさらおうと乗り込んできました。大将閣下、どうぞお嬢様との結婚をお許しください。」
「お父様、私からもお願いよ。私もずっとギュンター様のことをお慕いしていたの。」
「そんな急に言われてもだな。この縁談を引き受けてくださったファーレンハイト辺境伯の意向もあるし・・・」