そんなギュンターの気持ちを逆撫でするかのごとく、
そのカップルはクルクルとターンをしながら踊り続ける。
だんだんと出入り口の付近に近づいて行ったかと思うと、
当たりをキョロキョロと見回して一目散に会場の外に飛び出したのだ。
(2人で抜け出すってどういうことだよ⁉)

2人に遅れるまいとギュンターも慌てて会場の外にでる。
2人は廊下を奥へと一気に進み、2階へと上って行った。
2階はラーデマッハー家の私的空間だからギュンターがそこに行くのは気が引けたが、
良からぬ妄想が止まらないギュンターは階段を駆け上がる。
物陰に身を潜めながら2人の様子を伺う。
クララとマルクスはとある1室に入って以来、なかなか出てこない。

(クソっ、2人で何やってるんだ。変な声でも聞こえてきたら、扉蹴破ってでも押しかけるぞ。)
ギュンターのイライラが募っていた、ちょうどその時。
「じゃあ、テオとマーサ。大役よろしく!」
クララとマルクスが入った部屋から2人とよく似た背格好の男女が出てきた。
「兄さん、こっちもそれなりにリスク背負ってるんだからちゃんと成功させてくださいよ。」
「お嬢様、お嬢様の恋応援してますからね!」
その2人は先ほどまでクララとマルクスが来ていた衣装を着ている。
(どういうことだ?)