幸せを受け止めて~騎士団長は月夜に淑女をさらう~

クララとマルクス(+ラファエル)の計画など知る由もない
ラーデマッハー大将の挨拶とともに、
ラーデマッハー伯爵家のパーティは幕を開けた。

クララとマルクスは終始にこやかに招待客と挨拶を交わす。
招待客たちは口々におめでとうと祝福してくれるので、
彼らを騙しているような気がして少し良心がいたんだ。
パーティーは順調に進み、いよいよダンスが始まる。
「さぁ、景気づけのファーストダンスだ!」

クララはマルクスとペアになってそつなくダンスをこなす。
ダンスなど長らくやっておらず、
練習時はスカート捌きにも苦戦していたが、
もともと運動神経が良いので付け焼刃でも様になっている。
1曲目の終わりに近づくにつれて
さりげなくターンを繰り返して出入り口の近くに移動していく。
人々がダンスやおしゃべりに夢中になっている隙を見計らって、
2人はパーティ会場を抜け出し、
テオとマーサが控えている部屋へと一目散に駆け出した。

バタン。
扉を閉めるとマルクスとクララはへなへなと床に座り込む。
なかなかにスリリングな脱出だった。
「兄さん、早く入れ替わろう。」
「お嬢様、こちらへ。」
テオとマーサに促されて2人は着ていた衣装を交換する。
マーサの侍女服は腰の締め付けがなく動きやすい。
「クララ。タイムリミットは3時間だ。23時にさっきの会場に戻るんだよ。」
「分かってるわ。お互い頑張りましょう。」