今度はなくさないようにと、バッグの中の手帳にメモを挟んだ私は彼女に向き直る。

「そうだ。一緒に探してくれたお礼にジュースでも奢るよ…!」

「えー、いいよ。そんなの!探したっていってもすぐ見つかったしね?私は高梨さんと話しながら帰れるだけで十分。じゃ、帰ろっか」

「え、あ…うん」

サッと身を翻し、美術室のドアへと向かう如月さんに私は素直に着いていった。

メモも無事に見つかったし、特に一緒に帰ろうという誘いを断る理由ももうない。

それに、観月くん以外で話しかけてくれた初めての女子のクラスメイトだ。

…如月さんと、仲良くなれるといいな。

そんな淡い期待を胸に秘め、私は彼女と共に美術室を後にする。

その頃には、すっかりゴミ箱にあったメモの違和感に関しては「まぁ、そういうこともあるよね」くらいの認識になってしまっていた――。