時刻は16時45分。

俺は裏庭のベンチに1人腰をおろしていた。
文化祭初日もそろそろ終盤。
明日の2日目に向けて準備をする生徒たちがちらほら目に入る。

だよな…。やっぱり来てくれるわけないか…。

フッと思わず自嘲的な笑みがこぼれた。

まぁ、自業自得だよ。
俺がもっと早く話してたらこんな風に彼女に知られることもなかったのに――。

『悠理を傷つけるなよ。言っとくけど…俺はきちんと伝えたからな』

さっき大谷くんに言われたことが頭の中でぐるぐると駆け巡っていた。


*****


時は数十分前に遡る――。

『ねぇ…あれって』

『わぁ…かっこいいね!』

キャッキャッと騒ぐクラスの女子たちの声が廊下から聞こえてきて俺と畠中は様子を見に廊下に出た。

『…え、大谷くん?』

そこにいたのは、高梨さんの中学時代の同級生、大谷くんだった。
一度だけ、裏庭におもちを見に来た彼に会ったことがある。

前も思ったけど、本当にイケメンだし。
同い年なのかと思うほど余裕あるし…。

正直、勝ち目が見当たらない。

すると、俺に気づいた大谷くんは、

『あぁ…。観月だよな?あのさ、悠理の荷物どこ?』

そう尋ねてきた。