その時。
「…如月、話ってなに?」
聞き覚えのある声が近くから聞こえてきて私は思わず振り返る。
私と咲人のいる位置から少し先の曲がり角、ここからだと死角になっていて姿は見えないけれど…。
「観月、私があんたと話すことなんて1つに決まってるでしょ?"璃奈(るな)"のことよ」
いつもより声がワントーン低いが間違いなく如月さん…ううん、唯南ちゃんの声だ。
「璃奈、明日うちの文化祭見に来るの。私は観月もいるし…同じ中学の子もいるからって止めたんだけど…あの子、あんなひどい目に合っても観月に会いたいってさ…。でも、私はなるべくあんたに璃奈と関わってほしくないから、明日会っても…余計なことはしないで…それだけ伝えたかったの」
「…わかった」
観月くんはそれだけ言うと、押し黙る。
私の方向からは観月くんの背中しか見えなくて、どんな表情を浮かべているのかわからなかった。
「それならいいの…あ、あともう一つ。悠理ちゃんのことだけど…」
え、私…?
突然、飛び出した自分の名前に思わず身体が強ばる。
「あの事故の件、何で悠理ちゃんに救急車呼んだの自分だって、話してないのかわかんないけど…私からは話すつもりないわよ?」



