咲人の問いに私は伏せていた顔をあげる。

その瞬間、真剣な咲人の表情に思わず息を呑んだ。

高校に入ってから現在に至るまで、どちらかというと友達を作ることに必死で恋愛は二の次だった私。

そりゃ、気になる人がいないと言えば嘘になる。

そう。あの事故の日、私を助けてくれた同じ学校の男子生徒。

もちろん、恋愛かと言われると正直なんとも言えない。だって、顔も知らないし…。覚えているのは、私を助けて励ましてくれたこと。

だから。

「……わかんない」

これが今の私にとって、1番正直な答え。

「わかんない…ね。いないって言わないのは悠理らしい気がするわ」

私の返答に咲人は、小さく微笑みそう言葉をつむぐ。

「ま…。俺的にはすぐに答えを出してほしいってわけじゃないし。悠理の気持ちがわかったら返事ちょうだいよ」

「うん……ありがとう」

「さ、そろそろ花鈴と合流しようぜ。アイツ、全然連絡ないしどこほっつき歩いてんだか…」

スマホを取り出し、花鈴に電話をかける様子はもう普段通りの咲人で私は内心安堵した。