「ま、いいじゃん。優勝してお菓子の詰め合わせもらったし、俺は割と楽しめたよ」

「でもさ、なんか周りに申し訳ないよ。偽カップルなのに優勝するって…」

観客から盛大な拍手までもらってしまい、いたたまれない気持ちになったのを思い出す私。

そんな私をチラリと見据えて、咲人は、

「…俺は本当にしてもいいんだけど?」

そう小さく呟いた。

「……ん??ちょっと待って、それって…え?」

ワンテンポ遅れて口を開き、目をしばたたかせる私に対して、呆れたように小さく肩を落とす咲人。

「悠理ってさ、どうして恋愛方向になると急に感覚鈍くなるんだろうな。特に自分に向けられてる好意に対して…とか」

"自分に向けられてる好意"

咲人の真剣な表情と言葉に、私はピタリと足を止める。さすがにそこまで言われると、鈍感な私でも感じ取るものがあった。

時刻は15時過ぎ。

この時間帯は、体育館での出し物が行われているため比較的校舎にいる人の数は少なくて。

しかも、人混みが少ない所を選んで進んでいるため、現在、私と咲人は二人きりだった。