「…?そうですか?」

いまいち、観月くんのお母さんの言葉の意味が分からず頭にハテナマークを浮かべる私に対して、今度はお母さんの方がクスッと微笑んだ。

「ふふ。絶対そうよ?あ、でも心配しないでね?彼方ったらお昼はぜーんぶ食べれてたし食欲は出てきたからすぐ良くなると思うわ」

「そうなんですか…!それならよかったです」

ホッと胸を撫で下ろす私に「悠理ちゃん、優しいわね〜」と言葉を紡ぐお母さんに私はブンブン首を横にふる。

「そんなことないです…!観月くんにはいつも学級委員とかでもお世話になってるので…日頃のお礼というか…。あ!あの…これ、プリントです」

「あら、ありがとう。よかったら上がってく?お茶だすわよ〜」

「いえ、お構いなく…。それに、そろそろ帰らないと母も心配するので…」

チラッとスマホで時間を確認した私は申し訳なさそうに断りを入れる。

観月くんのお母さんは、私からプリントの入った封筒を受け取りつつ、「そう…残念だわ。で、でも!次来るときはぜひ寄っててね…!」と優しく声をかけてくれた。

「ありがとうございます。その時はぜひ…!それじゃ、おじゃましました」

最後に小さく会釈をして、私はくるりときびすを返す。

そんな私に向かって。

「あ!悠理ちゃん、今度の文化祭私も見に行く予定だから、また会いましょうね!彼方達のクラスの出し物楽しみにしてるわ〜!準備頑張ってね」

と、満面の笑みで手を振るお母さん。

私もそんなお母さんに対して、手を振り返すと、もと来た道を戻り始めたのだった。