「お前、スリルを味わいに来たんだろう。 前に行け」 八尋に軽く背を押され、衣茉は吊り橋の板の上にそっと足をのせた。 一度、のったら戻れない。 橋の板が狭いので、追い越してもらえないからだ。 「うわっ、揺れますよっ。 おばあちゃんちの田んぼの用水路の上を渡してある小さな板より揺れますよっ」 へっぴり腰になりながらも、後ろの人の迷惑になってはいけないので、バランスをとりながら、なんとか進む。 おおっ。 これは揺れるっ。 思わず、後ろにいる八尋の腕をつかみそうになったが、なんとか堪(こら)えた。