吊り橋まで行く小さなバスには、観光客らしき人はおらず、買い物帰りのおじいさんやおばあさんたちがぽつりぽつりと座っていた。
吊り橋までの料金がよくわからないので、衣茉たちは料金表がよく見える運転手さんの真後ろの席に座った。
バスの窓が少し開いていて。
ちょっと強めに風が頬に吹き付けてくるのが心地よく、歌い出したい気分になる。
「なんか歌い出したい感じですねっ」
とつい、口に出して言ってしまい、聞こえたらしい運転手さんが笑って、
「歌っていいよ」
と言った。
周りの乗客も笑う。
振り向くと、風にあおられた髪が八尋の顔の前を時折、ふわふわしていたらしく。
八尋が困ったような顔で、髪に触れないよう避けていたので。
「あっ、すみませんっ」
と慌ててシュシュで髪を結んだが。
八尋は何故か残念そうな顔をしていた。



