勇気を出して、週末デートに誘ってみたのにな……。 しかも、どんな断り方だ。 断崖絶壁か吊り橋に行ってくるとか、と渋い顔をした八尋に、衣茉が、 「恋のドキドキが書けないので行ってこようかと」 と行く理由を説明してきた。 どうも、吊り橋のドキドキで恋のドキドキを疑似体験したいらしい。 ……じゃあ、何故、俺を置いていく、と八尋は思う。 誰か男がいたの方がいいんじゃないのか、と思いながら、 「それは、誰か一緒にいた方がいいのでは?」 と衣茉にさりげなく訊いてみる。