覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)

 

 朝のバスで、衣茉は八尋と一緒になった。

「おはようございます。
 昨日は送っていただき、ありがとうございました」

 衣茉は並んで吊り革を持ち、頭を下げる。

「祝」

 はい? と顔を上げると、大真面目な顔で八尋が訊いてきた。

「いつも震えている犬は、どんな犬だ?」

「……ブルドック」

「フライパンじゃないのかっ」

「えっ?
 何故、フライパンなんですかっ?」
と衣茉は言ったが、

「いや、何故なのか、俺がお前に訊きたいんだっ」
と八尋に言われてしまった。