八尋は、寝る前に、たばこ屋の看板の写真を眺めてみた。
……うん。
悪くないじゃないか、と思う。
眺めていると、ホッとして楽しい感じになってくる。
だが、そう思うのは、その看板の横に立って、笑っている衣茉も一緒に思い出してしまうせいなのかもしれないが――。
スマホを置き、目を閉じた。
洗い立てのシーツの良い香りを嗅ぎながら思う。
今日は祝を無事、家まで送って帰ったが。
これで正解なのだろうか、結婚への道。
わからないことだらけだ。
そもそも、恋はできないけど、家族は欲しいから結婚してくれなんて。
祝に失礼じゃなかっただろうか、という当たり前のことに、何故か今になって思い至る。
自分の中で、衣茉が、人生計画の中にいる『嫁』という記号から人間に変わりつつあるからかもしれなかった。



