覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)

「……真面目に書けよ、いい加減」

 ひっ、部活のときのダメ出しっぽくなってきた。

「お前程度の作家は掃いて捨てるほどいるんだぞ」

 うっ。

「すぐに対応しろ。
 来週までにプロット二、三本持ってこい。

 恋愛もののなっ」

 ひー……。

 ……来週までに恋に落ちたい、と願って叶わず、衣茉は、昨夜の失態を思い出しながら、溜息をついた。

 満員のバスで吊り革にぶら下がっていた衣茉は、ふと視線を感じて振り向く。

 何人かの頭の向こうに、ひとつ飛び出している頭が見えて。

 とても良い顔の人がこちらを見ていた。