覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)

 そもそも、俺はあいつの願う『恋をしたい』という条件を満たせているのだろうか――?

 そんなことを渋い顔で考えていて、

「なんだよ。
 その、恋をしている男というより、難題を前にした学生みたいな顔は」
と言われた。

 そのあとで、吉行は誰かに気づき、手招きをする。

「衣茉ちゃん、こっち、こっち。
 空いてるよ」

 トレーを手に衣茉がやってきた。

「あ、えーと……」
のあと、衣茉は吉行を見、こちらをすがるように見、また吉行を見て、

「……ありがとうございます」
と言った。

 今は以心伝心できた。

 こいつは、おそらく、吉行の名前を知らない。