覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)

「あ、その、いつも健康のために立ってるんだ」

 いや、ほんとは単に混んでるからだが……と思いながら言うと、衣茉が、

「そうなんですか。
 じゃあ、私も立ちます。

 その方が健康的ですよね。
 座り仕事だし」
と言い出す。

 健康のために、というより、上司が立っているのに自分だけ座っているのが、気詰まりだからではないだろうか。

「ああ、いやいや。
 じゃあ、今日は座ろう」
と緊張しながらも、八尋は衣茉の横に腰を下ろした。

 できるだけ、衣茉に触れないよう、端に寄って。

 結婚しようと言ったときは緊張しなかったが。

 バスで横に座るのは緊張するな、と思う。