覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)

「なんででしょう?
 こんな安全なファミレスの中で、なんの危険もないのに。

 何処に居たときより、今――

 ドキドキしています」

 衣茉はスマホを取り出し、八尋に向かってメッセージを送った。

「私と結婚してくれませんか?」

 既読1になった。

 今度は消さなかった。

 だが、返信はない。

 顔を上げると、八尋は黙って目を赤くしていた。

 えっ?
 課長でも、涙ぐんだりするんですかっ?

 ちょっと可愛いかもっ。
 っていうか、更にドキドキしますっ、と思ったとき、わっと拍手が沸き起こった。

 振り向くと、店内のみんなが手を叩きこちらを見ていた。

「おめでとうっ」
「おめでとうございますっ」

 そ、そういえば、さっきから、ファミレスなのに、店内が静まり返っていたような……。

「いや~、途中から小声になるから聞こえなくて。
 思わず、身を乗り出しちゃったよ~」
と近くの席に居たアクセサリーをジャラジャラつけた茶髪のおにいさんが笑い、向かいに座っている、おとなしい感じの女の人につつかれていた。

 彼女は、どうもすみません、とこちらに向かって頭を下げながら、苦笑いしている。