覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)

「将来、お前がすごく有名になって、俺が捨てられることがあるとしても」

 そんな秋馬先輩が聞いてたら、大爆笑しそうな未来は永遠に訪れないと思いますね……。

「俺はお前と結婚したいし。
 お前のためなら、なんでもしてやりたいと思う。

 お茶も淹れてやるし、肩も揉んでやるし、気分転換にドライブや散歩にだって連れてってやるぞ」

 いや何故、すべてがこの間、原稿が煮詰まったとき、してくれたことなのですか。

 煮詰まるの前提ですか。

 そう思いながらも、八尋の気持ちは嬉しく、衣茉も本心を口にする。

「課長。
 私、課長と吊り橋に行ったとき、この人と出かけるとドキドキしないなって思いました」

 八尋が衝撃を受けた顔をしたが。

 いや、この話、前もしましたよ、と思う。

 だが、今、センシティブになっているらしい八尋は、なんでも深読みして、衝撃を受けるようだった。

 なので、慌てて衣茉はつづきの言葉を口にする。

「私、課長が居ると、何処でもドキドキしないんです。

 危険な吊り橋でも、人が渡ったら落ちそうな橋でも、タヌキしか居なさそうな山の中でも。

 課長が居ると、いつでも何処でも、安心感半端ないからです。

 ……でも」
と衣茉は俯いた。