覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)

 


 横に居ると、緊張するんですけどっ、
と衣茉は思っていた。

 こういう待っているための椅子、詰めて並べてあるから、隣と近すぎるっ。

 腰とか足とか、今にも触れそうで緊張しますっ。

 そんなことを考えながら、衣茉は呟いた。

「……今からこんな感じじゃ、課長と一緒に暮らすなんて無理ですよね。
 やって行けそうにありません」

 なんだって!?
という顔をした八尋はなにか言おうとしてやめる。

 腰を浮かして、満席の席がまだまだ空きそうにないことを確認していた。

「すまない。
 せめて、席に着くまで待ってくれっ」

 ……いや、なにをですか?

 すると、そこで、ちょっと声が大きくなりすぎたと思ったらしい八尋が声を落とし、訊いてくる。

「それにしても、どうしていきなり、そんなことを言い出したんだ。
 俺が嫌いかっ?」

「いいえっ。
 あなたと二人きりで居ると、緊張すると気がついたんですっ」
と衣茉も声を落とし、返事をする。

 小声でひそひそ話しているせいか。

 内緒話の雰囲気が漂っていたので、お互い、なんだか心の中をさらけ出せた。