覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)

「あ、いいですね~。
 実はまだ、なんにも晩ご飯考えてなくて」
と衣茉が照れ笑いする。

「そうか。
 なにか食べたいものあるか?」

 そう勢い込んで訊いたが、
「あっ、じゃあ、そこのファミレスのハンバーグが食べたいですね」
と言われてしまう。

 ……ファミレス。

 ファミレスか。

 プロポーズの場として、許可か、不許可かっ?

 さまざまな人々が○と×の札を持って、頭の中を駆け巡る。

 一番衣茉と感覚が近いかもしれない明子は特大の×印を持っていた。

「衣茉……っ」

「いや~、私、あの店のハンバーグ好きなんですよ~」

 ご機嫌で立ち上がる衣茉の顔を見てしまったので、なんだか別の場所に行こうとは言えず、

「そうか。
 俺もだ」

 その店のハンバーグなど食べたこともないのに、ついそう言って立ち上がる。