「おはよう、衣茉ちゃん」
朝、他の部署にお届け物をしに行くのにロビーを歩いていると、玖村が声をかけてきた。
「あっ、玖村さん、おはようございます」
と頭を下げたあとで、ふと衣茉は玖村に訊いてみた。
「玖村さんは雨男ではありませんか?」
「えっ?
……いや、違うけど?」
そうですか、とちょっと残念そうに言ったあとで、衣茉はなんとなく、
「いつもありがとうございます」
と頭を下げる。
なんとなくいつも世話になっている気がしたからだ。
無事に脱稿した衣茉は、今、この世のすべてに感謝したい気持ちになっていた。
「あ、うん。
なんだかわらかないけど、こちらこそ……」
と言いかけたあとで、玖村が問うてくる。
「あの、僕が雨男だとなにかあるの?」



