「うん。
なかなかいいじゃないか、この雨のシーン」
夜、編集部まで原稿を持っていって見せると、秋馬が珍しく大きく頷き、そう言った。
「お前にこんな切ない感じのシーンが書けるようになるとはな。
……まあ、切ない感じなだけで、そんなに切なくはないんだけどな」
そこで、秋馬は真顔でこちらを見て言う。
「八尋さんと別れたらどうだ?
もっと切ない感じに書けるぞ」
「……嫌です」
「だがまあ、お前の代表作になるってほどじゃないけど、いい出来だ」
こっちは代表作にはなりそうにもないのですね。
でも、秋馬先輩にお認めいただけて光栄です、と衣茉は思っていた。



