覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)

「何故、こんな私が課長と結婚できるんでしょう。
 なかなか書き終わらない底辺の人間なのに……。

 ……秋馬さんの方、ページ数長すぎですよね。
 私は何故、ショートショートが書けないんでしょう。

 そして、秋馬さんが、まあいいかで流してくれるところを沢木さんは流してくれません」

 そんな衣茉の言葉を八尋は黙って聞いていてくれる。

「ここ……

 ここ、何度書き直してもテンポが悪いんですよね……。

 課長、課長、まだいらっしゃいますか?」

 振り返りもせず、パソコンの画面を見たまま衣茉が言うと、どうも家を片付けてくれているらしい八尋が言う。

「いるぞ、大丈夫だ」

「よく具合が悪いときに、側にいてくれた人を好きになるとか言いますけど。
 人間、困ってるときに助けてくれた人のことは、一生恩に感じますよね。

 課長と結婚する女性は、きっと幸せ者ですね」

「……何度も同じ話が回っているが、大丈夫か」