覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)

「明日も早いから遅れるなよ」
「はいっ」

 八尋が帰ったあと、衣茉はリビングに戻りながら思う。

 途中でコンタクトに変えたし、着替えたし。

 まあ、なんとかなったか。

「いや、なにもなんともなってねえよっ」
と叫ぶ秋馬もいなかったので、まるで雑誌の一ページのように整ったおのれの部屋を見ながら、ただただ八尋に感謝する。

 素敵。

 こんな部屋だったんだな、私の部屋。

 カーテン開けてると夜景もよく見えるし。

 いやまあ、住宅街なんで、あんまり灯りもないんだが……。

 なんか今まで部屋に対して申し訳なかったな、と衣茉は思う。

 散乱した部屋を見られたくなくて、いつも薄いカーテンを閉めていた。

 でも、今日からはみんなに見て欲しいっ、と思いながら、衣茉はベランダに出てみた。

「いや、誰に見られるつもりなんだ。
 此処、何階だ?

 何処の宇宙人が覗く予定だ?」
と突っ込んできそうな八尋は今、マンション下の道を歩いている。