勢いあまった衣茉が分別してデビュー小説の載った雑誌まで捨てそうになったころ。 ついに、八尋が下のインターフォンから呼びかけてきた。 「着いたぞ。 開けてくれ」 嫌です……。 衣茉は縛り掛けの雑誌を見ながら思う。 「どうした。 早く開けてくれ」 と言う八尋の声を聞きながらも、衣茉は玄関ロビーの入口を開けなかった。 ……罠かも知れない、と思ったからだ。 決して片付いてないから開けたくないわけではない、 とあちこちゴミ袋などが山積みになっている部屋を見ながら心の中で言い訳をする。