覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)

 


 八尋はバスを降りたあと、衣茉を今日誘ってみようと思ったが。

 なんて言って誘おうかな、と迷っていた。

 そうだ。
 最初に出かけたときみたいに、衣茉の用事に付き合うというのはどうだろう、と思い、衣茉に訊いてみる。

「今日なにか用事はないのか?
 付き合ってやるぞ」

「用事ですか……」
と衣茉は考える風な顔をする。

 用事がないのなら、ただ出かけるだけでもいいんだぞっ、と思いながら、
「図書館に本を返すとかないのか?」
と訊いてみる。

 衣茉は、すっと目を逸らし、
「図書館は今ちょっと……

 この間からちょっと。
 気まずいので」
と言う。

 気まずい……?

 その言葉に、八尋の中で妄想が駆け巡る。

 八尋の中では、衣茉が図書館のカウンターにいる素敵な男性にプロポーズされ、断っていた。