覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)

 


 ん?
 なにやってんだ、あれは……。

 自分のデスクで仕事をしていた八尋は、衣茉が部署の入り口で手招きしているのに気がついた。

 いや、お前、自分の部署だろ。

 入ってきて仕事しろ、と思いながらも、衣茉が可愛いらしく手招きするので、つい、立ち上がり、そちらに行ってみた。

「今、お時間大丈夫ですか?」
と小声で衣茉が訊いてくる。

「……まあ、ちょっとなら」

 衣茉は自分を廊下の隅の方に連れていったが、
「お疲れ様です~」
といろんな人が通っていく。

「こっち来てくださいっ」

 衣茉が自分の腕をつかみ、渡り廊下の方に行った。

 どきりとした八尋はつい、少女漫画のヒロインのようなことを考えてしまう。

 このまま俺を何処かに連れて逃げてくれっ。

 だが、衣茉は足を止め、八尋を例の手帳の倉庫に押し込めた。