覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)

「誰を思って書いたんだ? これ」
と秋馬が真面目な顔で訊いてくる。

「子どもの頃、好きだった、某漫画の第三巻を思って書きました」

 人じゃないじゃないですか、という顔を椿がする。

「何処に行ってもなくって。
 ネット書店でもなくって。

 思いがつのって、違う街に行くたび、書店をうろうろ、その本の姿を求めて、さまよっていました。

 そのときの執着する心を思い出しながら書きました」

 そうか、と頷き、原稿用紙を見ている秋馬の姿に、衣茉は思う。

 なんだ。
 よくできてたのか。

 まあ、課長は私と一緒で、恋愛オンチだから、見る目がなかったんだろうな。

 その点、秋馬先輩は、恋の達人……。

 待てよ。
 確かに先輩モテてたけど、秋馬先輩の彼女って誰だっけ?
と思ったとき、秋馬が深く頷き言った。