覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)




 なんで野菜の国なんだろうな、と思いながら、衣茉は二冊の手帳を手にしていた。

 八尋の中では、ほかほかの肉まんを手にした肉市民たちは肉の国に住んでいたので。

 それとは違う話、と思ったときに、つい、野菜の国と言ってしまったのだが、衣茉には、もちろん、そこのところは伝わらなかった。

 だが、細かいことは気にしない衣茉は、課長に手帳もらっちゃった、ととりあえず喜ぶ。

 明子や総務の人が聞いていたら、
「いやいや、くれたの、佐山文具さんでしょ」
と訂正してきそうだったが。

 ふふ、と衣茉は手帳を見たが、うっかり同じ手に持ってしまったので。

 どっちが八尋にもらったものかわからなくなり、ガッカリする。

 まあいいや、両方大事にしよう、と思った瞬間、がちゃん、と鍵をかける音がした。

 振り返ると、八尋がいない。

「かっ、課長っ?」

 どうやら、外に出た八尋が倉庫に外から鍵をかけたようだった。