覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)

 


 それから数日、衣茉は普通に日常を送っているつもりだった。

 だが、かつてなく、すいすい原稿が進んだので、すぐに秋馬にデータを送ってみると、折り返し、電話がかかってきた。

「どうしたっ?
 なんか最初の頃に戻ってるぞっ。

 なんだ、このキリキリとした硬質な感じ!
 これは沢木さんとこに出せ!」

 うちはこういうの求めてないっ!
と怒られた。

「もっとピュアッピュアな感じで来い!
 俺がお前に求めているのはそれだけだっ。

 だが、お前がなにか変わっていってるのはわかる。
 上手く化けるかもしれないっ。

 もう俺を好きになってくれなくてもいいから、今の相手をよく見て、ピュアになれっ!」

 ――好きになってくれなくていいからってなんだろうな?

 編集として、嫌われてもいいと言うことだろうかな?

 その辺、よくわからなかったが、とりあえず、
「わかりました」
と言ってしまう。

 衣茉の悪い癖だった。