学校をぐるっと回ったあと、元のテニスコート前に戻ってきた衣茉は、
「ありがとうございます。
いいものが書けそうです」
とメモをしながら言った。
「今のでか。
嘘だろ……」
と八尋に言われながら。
「お礼にお昼おごりますよ。
なにがいいですか?」
「いや、俺がおごろう。
なにがいい?」
いや、俺が私がっ、とレジ前で揉めるおばちゃんたちのようなことを言い合いながら。
結局、八尋の行きつけだという小さなお寿司屋さんで、気のいい大将に寿司を握ってもらうことになった。
開店五十周年とか言うので、記念の湯呑みももらい、ほくほく顔の衣茉の横で、八尋が冷蔵ネタケースの中の活きのよいネタを見ながら言う。
「お前の仕事が上手くいけばいいなと思う一方で。
お前が華やかにデビューして、こうして一緒にいられなくなったりしたら、少し寂しいなと思ったりもする……」



