覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)

 この中で、私の本を愛読書にしてくださってるのは、八尋さんだけと言うことですね。

 よくわからないが、読まない人たちのノートにサインさせられ。

 この間、偽サインを書いといてよかったと思いながら、練習に戻っていくみんなに手を振る。

「なんだかんだでいい子たちでしたね」
と練習する彼女らを眺めていると、ひとり残っていた沙里が言った。

「ありがとう、衣茉」

「えっ?」

「いや、練習のいい息抜きになったよ。
 みんな楽しそうだった」

 沙里たちのテニス部はかなりの強豪らしく、いつも厳しい練習に明け暮れているのだそうだ。

「それならよかったよ。
 こちらこそ、ありがとう。

 ちょっとぐるっと校庭の辺歩いて帰っても怒られないかな」

「大丈夫だと思うよ。
 先生になんか言われたら、私の名前出して」

「……それ、沙里の名前出したら、先生も震え上がるとか?」

「私に忘れ物持ってきたって言えって意味よっ」
といつものように怒られる。

「じゃあね、気をつけて。
 あ、えーと」
と八尋を見て、沙里はちょっと困った顔をする。