覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)




 衣茉たちが沙里の家に行き、テニスのラケットを受け取って高校に行くと、知らない高校なのに、なにかこう、懐かしい感じがした。

 学生時代特有の雰囲気とでもいうか。

「なにかいいものが書けそうです」
と言うと、

「そうか、よかった。
 湯村が喜ぶぞ」
と八尋に言われる。

 いや、あなたは喜ばないのですか、と思いながらテニスコート前に行くと、短パン姿の女子たちが集まっていた。

「ありがとう、衣茉」
とセンターに立っていた沙里がラケットを手に言う。

「ラケット持ってんじゃん」

「念の為、一本は持ってきといたんだよ。
 あんたのことだから、あ、間違えちゃった~って、バトミントンのラケットとか持ってきそうだから」

 その場合、間違えたのは、ラケット渡したおばさんでは……と思っていたが。

 いかにも自分がやりそうなミスだったので、黙っていた。