覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)

 今までなら、
「お前と結婚するんだろ?
 だったら、家族も増えるだろうし、大きな車も必要かなと思って」
と事務的に言えたのに。

 八尋の中で、衣茉との結婚生活が現実味を帯びてきて、なんだか照れるような心地がし。

 軽く結婚のことを口に出せなくなっていたので、すっと言えなくなっていたのだが。

 衣茉の中の『結婚』は、森の中にひそむシチューのおばあさん、くらい、現実味がなかったので、わからなかった。

「では、失礼しますね」

 大きな車によいしょと乗った衣茉は、
「まだ新車の匂いがしますね。
 汚さないようにしないと」
と言いながらも、喜ぶ。

 新車の匂いが好きだからだ。

「そういえば、お前は免許を持っているのか?」