覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)

「今、体調を崩したらどうする。
 なにか思いついても書けなくなるぞ」

 そうなんですよね~、とぼーっと言いながら、衣茉は木々の向こうに浮かぶ白くて丸い月を見上げた。

「あ」
と声を上げ、立ち止まる。

「そうだ。
 滝じゃなくて、学校に行きましょうっ」

「いや、なんでだ……」

「私には甘酸っぱい青春も、硬質だったり、トゲトゲだったりする青春もなかったので、人様の青春を覗きに行きましょうっ。

 程よく、近くの高校に従妹がいます。
 明日、忘れ物でもしてもらいましょう」

 届けに行くために、と衣茉は言う。

「人様の青春を見て、なにか書けるのか……」

 まあ、とりあえず、ついて行こう、と八尋は言ってくれた。