覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)

「あの処女作みたいな硬質なイメージで青春物を書いてみてくださいと言われたんです」

「……すべてが無茶振りだな」

 今のお前には硬質なイメージもないし、青春物も程遠いだろ、と言われる。

 だが、明子だけが微笑み、手を打った。

「綾原先生っ」
とさっきまで、私のしょうもない発言でメモをとるな~っ、と首を絞めかねない勢いだったのに、衣茉の手をとり上機嫌で言う。

「その新作っ。
 お待ちしておりますっ」

「……が、頑張ります」

 高まる明子の期待に強張る衣茉の斜め前で珈琲を啜りながら、吉行が言った。

「なになに、みんなその綾原小織な衣茉ちゃんのファンなの?
 じゃあ、俺も読まないといけないよね」

 いや、義務じゃないんですけど……。