衣茉は八尋の家のリビングで、千栄子が語る八尋の話を聞いていた。
「今までにも見合いの話、向けたことはあるんだけどね。
この子ったらね~。
見合いの身上書と写真見ただけで、思想が合わないとか言って断ったりしてたのよ」
「だって、好きなものが、タピオカとマカロンだったりするんだぞ。
そんな流行りやインスタ映えを追ってそうな女と話が合うわけないだろ?」
チラとこちらを見た八尋が、
「またメモか」
と言う。
スマホを手にしたからだろう。
いえ……と言う衣茉は、友だちとタピオカ屋の前で撮った写真をそっと消していた。
……なんとなく。
「あら、衣茉さん。
なに?
メモって、小説に使うの?
私のことも書いて書いてっ」
な、なにを書けばいいですかね、と衣茉が苦笑いしたとき、
「そうだ。
面白い話があるのよ~。
私の学生時代の話なんだけどね」
と千栄子の長い長い思い出話がはじまった。



