覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)

 


 やがて見つけた小さな東屋で、衣茉と二人、座ってジュースを飲む。

 木のベンチの汚れを払ってやっただけで、

 えーっ?
 課長って、そんなことしてくれたりするんですかっ?
という顔をされたのが、少々不本意だったが。

「稼ぎの点からいっても、私の本業はOLなんでしょうから。
 小説の方は、たま~に本が出たりして。
 細々でも続けていければな~って思ってるんです」

 そんなことを衣茉は語る。

「……でも、ある程度の成功をおさめないと。
 たくさんの本を収納するスペースが得られないんですよね」

 なにを言ってるんだ? こいつは。

「もう、今のマンションも本が収納しきれなくなってて。
 部屋とは別に本を収納する部屋が欲しいんです。

 だから、私の夢は、いつか、ちょっぴり本が売れて。
 昔の貴族の邸宅にあるような図書室を作ることです」

 それは、ちょっぴりでは無理だと思うが……、と思いながらも話は合わせる。

「木のハシゴとか踏み台とか置いてあるような奴な」

「そうです。
 そして、巨大な書棚が動いて」

 スライド式で奥にも本があるのか、と思ったが、

「秘密の通路が現れるんです」

「……もう本関係ないじゃないか」
と言うと、衣茉は笑った。