覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)

「箱入りのティーバックの紅茶なんですけどね。
 いや、普通にスーパーで売ってる奴なんですけど。

 外のフィルムをはがすと、ふわっといい香りがするんです。

 紅茶自体は別の缶に移すんですけど。

 あとに残った紙の箱に紅茶の香りが染みついてて。

 それ嗅ぐとものすごく幸せな気持ちになれるんです」

「……紅茶じゃなくて、紅茶の箱か。
 安上がりな奴だな」
と言われて、ははは、と笑ったとき、ふと、

 そういえば、課長といても、あまり緊張しなくなったな、と気がついた。

 いや、逆に変に緊張してしまうタイミングもあるんだけど。

 ……うーん。
 上手く言葉にできないな、
と衣茉は、秋馬に言ったら、

「それそれそれだよっ。
 それをなんとか言葉にしたら、恋愛ものが書けるんだよっ。

 あとちょっとだな、頑張れっ。
 でも、その会社はもう辞めろっ」
と叫ばれそうなことを思っていた。