覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)

 八尋は、何故、今、そんなことを思ったんだ、という顔をしていたが。

 いえいえ、課長が頼り甲斐がありそうだと思ったからですよ、と思いはしたものの、ちょっと恥ずかしくて言えなかった。

 夜風は心地よく、手にしている飲み物は程よくひんやりしていて。

 衣茉はちょっと浮かれていた。

 八尋に、
「なんだか楽しいですねっ」
と言って、

「お前はいつも楽しそうだが」
と返される。

 いいえ。
 書けない原稿を前にしているときは、なにも楽しくないですよ……と思ったとき、八尋が言った。

「最近で一番嬉しかったことはなんだ?」

「えーと。
 あ、新しい紅茶を開けたことですかね」

「紅茶?」